電気サーカスは週刊アスキー誌上で連載されていた唐辺葉介の小説。
週刊アスキー自体を読みだした時期の関係で途中から読み始めたんだけど、すっかりハマり2013年11月22日に単行本が発売されて即購入。
舞台はネット黎明期。多くのインターネット接続がテレホーダイで接続しダイヤルアップがガーピー鳴っていた頃。
低速回線しかないインターネットで流行していたテキストサイトであることないことを日記に書くことが趣味の主人公「水屋口悟」と、ネット上の魑魅魍魎達との交流の物語。
ジャンルはなにかというと、しっくりくるものがないのだけれど、一応青春小説としておくべきか。
テキストサイト、僕もリアルタイムでは知らない文化で、要は文章を淡々とアップロードする個人サイト。ブログの前段階と言えるし、そう言いきれない部分もあるし。という不思議な文化。
詳しく知りたい方は、ちょっと長いですがこちらを。
さて、話を電気サーカスに戻すと、テキストサイトの管理人同士でルームシェアをするという物語。
そこで巻き起こるあれこれが淡々と描かれていくのだけど、少し前に流行っていた「ルームシェアで同年代の志が高い親友を作って切磋琢磨して社会に羽ばたこう!」なんて話ではまったくない。
同居が始まった当初は「テキスト書ける奴もプログラムを書ける奴も音楽できるやつもいるから、なんかおもしろいことができるかも」みたいな話も出ていたけれど、それも一瞬の出来事。みるみるうちに堕落、堕落、また堕落。
主人公の水屋口という男がどこまでも行き当たりばったりのダメ人間であれば、他の主要な登場人物にも真人間なんていない集団生活。
ヤブ精神科医で向精神薬を処方してもらいトリップしていたり、中卒15才女子が同居生活に参入したり、そいつをめぐっていざこざが…
ポジティブな話は一切無い。
まっとうな人生を踏み外して、インターネットで誰に読まれるともわからない文章書きをしている人々の集まりに対して、キラキラした奇跡とか、サクセスストーリーを求めちゃいけないし、求める方がそもそも間違っているとも言える。
どこまで読んでも暗くて出口のない、息苦しい世界が延々と続いていく。
息苦しさを楽しめない!って言う人には向かないけれど、ヒットする人には何回も読み返す小説になるはず。
みるみるうちにごちゃごちゃになっていく人間関係をぼんやり眺めていると、「あ、こういうの見たことある」と思うこともたまにあって、背筋が薄ら寒くなったりする。でもそのゾクッとした感じを求めてまた読んじゃう。
共依存だったり、ネット上での人間関係だったりの変な人間関係にお悩みの人にもどうぞ。