国立美術館で行われている企画展「遠距離現在 Universal / Remote」を見てきた。

国立美術館で行われている企画展「遠距離現在 Universal / Remote」を見てきました。

20世紀後半以降、人、資本、情報の移動は世界規模に広がりました。2010年代から本格化したスマートデバイスの普及とともに、オーバーツーリズム、生産コストと環境負担の途上国への転嫁、情報格差など、グローバルな移動に伴う問題を抱えたまま、私たちは2020年代を迎えました。そして、2020年に始まった国境のないパンデミックにより、人の移動が不意に停止されたものの、資本と情報の移動が止まる気配はありませんでした。かえって、資本や情報の本当の姿が見えてくるようになったと思えます。豊かさと貧しさ。強さと弱さ。私たちの世界のいびつな姿はますます露骨に、あらわになるようです。
展覧会タイトル「遠距離現在 Universal / Remote」は、資本と情報が世界規模で移動する今世紀の状況を踏まえたものです。監視システムの過剰や精密なテクノロジーのもたらす滑稽さ、また人間の深い孤独を感じさせる作品群は、今の時代、あるいはポストコロナ時代の世界と真摯に向き合っているようにも見えます。本展は、「Pan- の規模で拡大し続ける社会」、「リモート化する個人」の2つを軸に、このような社会的条件が形成されてきた今世紀の社会の在り方に取り組んだ8名と1組の作品をご紹介します。

https://www.nact.jp/exhibition_special/2024/universalremote/index.html

美術展の説明ってなんだか仰々しいけれど、「テクノロジーが進歩してグローバル化していく社会と、孤立していく個人」がテーマとなっている展示である。

開催情報

場所:国立新美術館 企画展示室1E

期間:2024年3月 6日(水) ~ 2024年6月 3日(月)、毎週火曜日休館

チケット:1,500円(一般)、1,000円(大学生)

僕は基本的にはテクノロジー大好き人間なので、テクノロジーを否定する言説には眉唾だったりするのだけど、テクノロジーの進歩に対して否定的・懐疑的な言説は様々に噴出しているし、実際そのうちのある程度は説得力を持っていると思う。
特に今回の「グローバル化と孤立していく個人」に関しては、感じる部分が多々あったりする。

ちなみに、今回の展示は2019年以前に制作されたものがほとんどであったりする。
2019年以前にこの作品を観ていたとしたら、現在感じるのとは、また違った意味合いを感じ取っていたのではないか…と考えるのも結構おもしろいんじゃないかと思う。

井田大介『誰が為に鐘は鳴る』という作品は、炎の上昇気流を受けて飛び続ける紙飛行機の映像作品。
否応なく「インターネットで炎上を繰り返しながら人気を得ていくインフルエンサー」のことを想起させるし、一旦バランスを崩しさえすれば自分が炎上をするという表裏を想起させる。

トレヴァー・パグレン『海底ケーブル』というシリーズは、インターネットで簡単に国境を越えられる裏に物理的にあるもの、またそれを監視するものが描かれる。
日本からアメリカのウェブサービスを利用する時、もしかしたらここを介して通信が行われているのかもしれない。そしてそれは監視されていてもひとつもおかしくはない。

エヴァン・ロス『あなたが生まれてから』は、彼の次女が生まれた日以降のブラウザのキャッシュ画像を壁紙として再構築した作品だ。
展示スペースに入った直後からその画像の枚数に圧倒されるのだけど、中身を細かく見ると本当に雑多な画像がキャッシュされているのがわかる。おそらく自分自身が見ようと思ったものではない、企業のロゴや広告に含まれたであろう画像、謎の風景の写真…
こういったキャッシュから人間の人となりはわかるのだろうか。それこそAIにでも分析してもらわないといけないかもしれない。

テクノロジーの進化は止めようがないとして(止めるべきではない、と個人的には思うし)、のだけれど、個人と社会のあり方はもっと試行錯誤されるべき事柄であり、この「遠距離現在」という展示はそれを思い起こさせてくれる。
思春期ではないけれど「アイデンティティ」って考えなくてはいけないのかもしれない。

開催情報

場所:国立新美術館 企画展示室1E

期間:2024年3月 6日(水) ~ 2024年6月 3日(月)、毎週火曜日休館

チケット:1,500円(一般)、1,000円(大学生)

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