チョコレートを買った話

だいぶ前に見たテレビ番組で「チョコレートを嫌いな人の割合は?」という企画をやっていた。街頭調査の結果、チョコレートが嫌いなのは100人中3人。97対3。統計学的に100人アンケートがどの程度有効なのかはわからないけれど、さすがにここまでの大差がついているというのも珍しいと思う。

そして、僕は3%の側である。

小さい頃は甘いものが嫌いで、幼稚園のバレンタインイベントで無理矢理チョコレートを食べさせられて吐き出してしまうほどにチョコレートがダメ。あれでチョコレート嫌いが決定づけられたんだと思う。

小学生になると「本命の人にだけあげるのは恥ずかしいからクラス全員にチョコ配布」的なことがちょくちょくあったが、その全てを食べずに親に渡してきた。
中学ではチョコレートに縁がなかったし、高校でも同様。
大学4年の時にやっとのことでチョコレートを食べられるようになったのだけど、別に好きになったというわけではない。ただ食べられるだけだ。

「チョコレートが嫌いだ」と言うと決まって「バレンタインにもらえないことを誤魔化すためだ」と言ってくるやつがいるのだけど、まったくもって迷惑な風習を作ってくれたものだと思う。
バレンタインの風習を作ったのが製菓会社でなく平賀源内だったらバレンタインには思い人にウナギをプレゼントする風習ができあがっていたかもしれない。
いいじゃない、精力つくし、チョコレートよりもウナギの方がプレゼントされて嬉しいし。そんなことになったらウナギ絶滅待ったなしだけど。

とまあ、そんな人生の大半を筋金入りのチョコ嫌いとして過ごしてきた自分が、仕事帰りにチョコレートを買ってしまったのだ。
チョコの味を欲したわけではなく、板チョコの「パキッ」という食感が欲しくなったのである。
疲れ果てて、もういろいろ嫌だなあ、仕事辞めたいなあ。なんて思いながらチョコレートを買って、駅まで歩きながら板チョコを噛む。そうしたらなんだか少しだけ気分が回復したような気がして、「世のチョコレート好きの人は、こういう気持ちだったのか」と妙に合点がいってしまった。

あれから数日、机の上にチョコレートがあるのだけど、あまり食べる気にならない。あの時はなんであんなに食べたくなったんだろうか。
まあ、チョコが溶けない季節だからいいのだけど。

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