2023年のGoogle I/Oはこれまでの同イベントとは大きく異なり、GoogleのAI技術に関しての基調講演といった感じだった。
先行しているように見える「ChatGPT」や「Bing AI」に対して、これまで技術で情報を整理することにおいて圧倒的にトップを走っていたGoogleの返答が「Bard」であろう。
少し前から英語版が提供されていたけれど、日本語でも使用可能に。まだ各所に不安はあるものの、それなりにしっかり使えるAIとしてスタートを切ったようだ。
ChatGPTが話題になったところで、アカウントを作成して、edgeを入れて、検索エンジンをBingにして…なんてめんどうくささはない。ほとんどの人が自然と使っているGoogleのサービスに高機能なAIが統合されていくのだ。「みんなが簡単に使える」というのはゲームチェンジャーに必要な素質だと思う。
とにかく動作が速いのは正義である
Bing AIとBardの最も大きな差は「応答速度」と言えるんじゃないだろうか。Googleの持つ豊富すぎる計算資源が大いに役立っていると思われる。
たとえば「九州の面積を教えてください」という簡単な質問に対してBing AIは15秒ほどを費やし、
こんにちは、これはBingです。九州の面積は36,782平方キロメートルです。九州は日本の主要4島の中で3番目に大きい島です。九州の面積についてもっと知りたいですか?それとも、他の島や地方との比較が知りたいですか?
と返答した。「九州 面積」で検索すれば一瞬でわかる事柄であり、ちょっと時間がかかりすぎていると思う。
対抗するBardは4秒ほどで、
九州の面積は36,780km²です。これは、日本の本土で4番目に大きい地域です。九州は、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県の7つの県で構成されています。九州は、美しい自然、豊かな歴史、独特の文化で知られています。
と返答してきた。
待ち時間が3分の1で済むというのは、かなりのメリットだと思う。
実際のところ信頼性ってどうなのよ
続いて両AIに「九州の面積は、東京都の何個分ですか?」という質問を投げてみた。これは九州の面積と東京の面積を調べて、割り算をすれば簡単にわかるはずの問題である。
九州の面積は約36,782平方キロメートルで、東京都の面積は約2,194平方キロメートルです。したがって、九州の面積は東京都の面積の約16.8倍です。九州についてもっと知りたいですか?
30秒ほどを費やしてこの答えを叩き出してくれた。ちょっと時間がかかるなあ。
九州の面積は約47,455km²、東京都の面積は約2,190km²なので、九州は東京都の約21.7個分です。
対するBardである。3秒ほどでの回答で、やっぱりBardの方が普段使いする上で有用…かと思ったら計算結果がBing AIと違う。
九州の面積「47,455km²」って数字はどこから持って来たんだ?さっきは「36,780km²」って答えてなかった?正しい回答はもちろんBing AIの方である。
そう、Bardの弱点はなんといっても信頼性である。Bing AIもたまにとんでもない間違いを教えてくることがあるのだけど、Bardはその上を行く珍回答を見せてくれる。
Google I/Oで「我々はAIの進化の重要な場面に立ち会ってきた」と「ぽっと出のOpenAIに負けてたまるか」という強いメッセージと共に公開されたBardだけど、広く公開するのは時期尚早という意見がGoogle社内からも上がっていたらしい。
検索エンジンで圧倒的なシェアを持つGoogleのAIが、間違った回答を広めてしまったら…という懸念があったそうなんだけど、その懸念はかなり正しいんじゃないかと思っている。
BardもBing AIも、まだまだ日が浅い技術であるというのは念頭に置かないといけないし、しっかりとしたフィードバックがなければ、ただの文章生成botとして短い生涯を終えることになってしまう。
幸いBardには「他の回答案」という選択肢があり、微妙に異なる3つの回答を閲覧することができる。これはいろいろな情報から回答の信頼性を判断する上で役に立つだろう。
Bing AIはその回答を作成するにあたって引用したサイトのURLを提供してくれる。正確なソースから生成された答えかどうかの確認ができるというわけだ。
いろいろな懸念はあるものの、AIの進歩というのは人にとって本当に大きな転換点になるかもしれない事象だ。是非ともその行く道を見届けてみたいものだなあ。