「MANGA都市TOKYO」展に行ってきた

国立新美術館で開かれている「MANGA都市TOKYO」という展示がどうにも気になったので行ってきた。

参考 MANGA都市TOKYO

マンガや特撮、アニメゲームなどなどの創作物に描かれる「東京」という都市が、どのように変遷してきたのか、実際の歴史と重ね合わせて「東京」の姿を俯瞰するという展示である。

マスコットキャラクターの「ヨリコ」と「ヴィッピー」


会場に入ると、この展示の目玉である「1/1000巨大東京都市模型」と対面する。

この模型は展示を回っていく中で何度も訪れることになる。
奥のスクリーンでは、「東京」をモチーフにした作品がダイジェストで流されており、その舞台となった場所が模型上でライトアップされる仕組みだ。
ゴジラに破壊され、ラブライブ!のキャラクターが走り回り、グランツーリスモではスポーツカーが走り回る。実に様々な作品の舞台として「東京」は使われてきた。

展示は「破壊と復興の反復」というセクションから始まる。
ゴジラシリーズやエヴァンゲリオンで破壊される東京。太平洋戦争でボロボロになった東京が、今度はフィクションの「東京」として壊され、時代に合わせて復興していく様子が描かれる。

続いて「東京の日常」というセクションでは「プレ東京としての江戸」「近代化の幕開けからポストモダン都市」「世紀末から現在まで」の3つのセクションが用意されている。
特に「世紀末から現在まで」の展示は興味深かった。現代に近付き、経済が低迷期に入り、きらびやかな都市として描かれてきた「東京」から、市井の人々の日常を暮らす「東京」として描かれることが増えてくる。表現される日常の解像度も上がり、キャラクター達が本物の東京で暮らしているような作品が多く登場することになる。

最後のセクションとして、キャラクターが市民権を得てフィクションから現実に登場するようになった「キャラクター vs. 都市」の展示がある。
コンビニに初音ミクが現れたり、ラブライブ!のキャラクター達が電車のラッピングに起用されるなど、現実の東京とフィクション「東京」の境目が曖昧になっていく。


最近…というほど最近の話ではないけれど、「聖地巡礼」という行動が広まったことによって、これまでフィクションの舞台として選ばれてこなかった地方がクローズアップされることが増えた。
映画ではすでに、町おこしのためにロケを誘致するというのが行われているらしい。アニメやマンガを誘致するようなこともあるのかもしれない。

ただ、その聖地は「舞台」に以上に昇華されているんだろうか。と感じることがたまにある。背景が現実の模写であること以外、作品がその地方を舞台としている理由を感じられない物も少なくないんじゃないか。
極端に言ってしまえば「舞台はどこでもいいんじゃない?」と言いたくなる。背景だけ入れ替えれば成り立ってしまうような。

対して「東京」はその都市自体が舞台として意味を持っている。
怪獣が壊すのはやっぱり国会議事堂や東京タワーだし、アイドルの事務所は東京にあり、スーパーカーを走らせるのは246なのだ。
「東京」よりも文化的に濃い背景を持つ場所は他にいくらもありそうだけど、フィクションというのはやっぱりなんだかんだ「東京」を舞台に選んでしまう。
選ばざるを得ない理由がある。それが「東京」の力なのだろう。

江戸という現代とはまったく違う文化を抱え、戦争でボロボロになった過去があり、そこから奇跡的に復活を遂げ、世界有数の人口を抱える大都市になった。
経済的に低迷期を迎えたとはいえ、それでも多くの人々の日常が動いていく。
少なくとも日本においてフィクションを作る上で「東京」に匹敵する都市は存在しないのだ。

また、フィクションの舞台として選ばれた東京のイメージが人々のイメージする「東京」に大きな影響を与えていることは間違いない。
実際に東京を訪れたことのない人でも、マンガ・アニメ・ゲーム・ドラマ・歌などなど、フィクションの「東京」にはなにかしらの形で触れていることだろう。
そしてフィクションが与えたイメージは、様々な形で、どんどん東京のイメージを侵食していく。

これから先にどんな「東京」が描かれることになるのかはわからないけど、それが良い時代としての「東京」であればいいなと思う。

国立新美術館って、建物自体がフィクションっぽい

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