ビートルズが好きである。
聞き始めたのが中学生の頃だから、数えるとファン歴10年くらいだ。
ビートルズが活動していた頃というのは僕は影も形もなく、それゆえにすべて後追いするファンにならざるを得ない。いろいろな知識を入れてどう足掻いたとしても、リアルなビートルズを体感することはできないのである。
そして実際にこの目で見ると言うことができない…というのがリアルタイムを体感することができなかったファンの悔しい点だ。
そんな中、ビートルズがライブをやっていた時期、1963年から1966年を描いた『ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK The Touring Years』が公開となった。
そしてこの映画が一部映画好きに有名になりつつある、シネマシティ(立川市)で「極上音響上映」がされるということで足を運んだのであった。
スポンサーリンク
目次
- シネマシティの極上音響上映シネマシティが有名になったのは、『マッドマックス』の極上爆音上映だろうか。こだわった音響で爆音…というのが「極上爆音上映」であるが、今回は「極上音響上映」ということで、爆音ではなかったらしい。十分に音は大きかったけど。後ろの入り口から入場したのだけど、最後列からだと若干スクリーンが遠いのかな…?という印象を受けた。僕はちょうど劇場の中央あたりの席を取っていたのだけど、その辺りだとちょうどよくスクリーンが見える。そしてやっぱり音響はかなりいい感じ。『マッドマックス』や『シン・ゴジラ』のように重低音がドンドン来る…というタイプの映画ではなかったが、しっかりとベースの音が聞こえたり、音のメリハリが付いているというか、演奏と話し声がしっかりと分離して聞こえるなど、さすが極上音響。特によかったのは『Norwegian Wood』の冒頭のギターや『A Day In The Life』の最後の部分のオーケストラの演奏の余韻が残り続ける部分などなど。もちろんライブ部分も音が良いのだけど、ファンの歓声がすさまじすぎてね…「いい音響だ!」というのがかなりはっきりとしていた。立川まで足を伸ばした甲斐はあったと思う。少しでもリアルなビートルズを感じられた気がする。リマスタリングがすごい映画本編は、とにかくビートルズのツアーの映像、当時の時代背景であったり、関係者のインタビューが連なっていく。1963年から1966年。ビートルズがライブツアーを行って、ライブバンドとして、若者のシンボルとして、大きな存在となっていく過程が丁寧に描かれている。スクリーンに映し出される当時のライブ映像は驚くほどきれいにリマスタリングされていて、わりと最近撮られたもののようにすら見える。もちろん音に関してもリマスタリングが行われており、ライブ盤としてしっかりと聞けるようなクオリティになっていた。60年代の映像・音声が生まれ変わっているのだ。これまでに見たことのない映像も大量に出てきていて、ビートルズファンとして大満足の2時間+ライブ映像30分であった。ビートルマニアの熱狂ビートルズはベビーブームの若者のシンボルであったが、それゆえに一部のファン(ビートルマニア)の熱気も常軌を逸していた。ライブのチケットが取れなくて地面に座り込んで泣き叫ぶ。メンバーが乗った車を追い回す。建物のガラスを割って中の様子を覗こうとするなど、もうほとんど暴動レベル。ベビーブーム世代のたまったエネルギーが暴発しているようなようであった。当時の映像から見えてくるライブの様子はかなりひどいもので、一挙手一投足に金切り声の歓声、警備員の静止を振り切りステージに向かってダッシュ…当時の機材の限界もあり、ほとんど演奏が聞こえないような騒音の中、メンバーが自分たちの演奏が聞こえず、後ろでドラムを叩くリンゴは動きで音を合わせていたと証言する。ライブアーティストからレコーディングアーティストへそんな状況にあって、ビートルズに否定的な立場の人も増えていく。かなり印象的であったのは日本公演である。1966年に行われた日本公演は日本武道館であったが、「武道館でポップミュージックのコンサートが行われるというのは侮辱である」という言説が一部にまかり通り、「BEATLES GO HOME」や「ビートルズを叩き出せ」といった看板が掲げられた。その当時、ロックは不良の音楽であるといわれていたわけだが、ビートルズはその代表格とされたわけだ。そんな中でビートルズがライブアーティストからレコーディングアーティストへ変貌する過程が丁寧に描かれていた。一部の大人の中傷的な主張、ジョンの「ビートルズはキリストより有名になった」という発言への反発運動、イメルダ夫人のワガママ、演奏を聴いていないファン、マスコミの必要以上に攻撃的な質問など、ライブを終わりにしたくなるような出来事が連続して起こっていたことを、当時の映像ははっきりと記録していた。1966年、ビートルズ最後の公演となったキャンドルスティック・パークでのライブ後に護送車で移動しながら「もうこんなライブは終わりだ」となった4人の気持ちが痛いほどに伝わってきた。本編終了後に流された1965年のシェイ・スタジアムでのライブ、そして本編の最後に流れたビートルズ正真正銘最後のライブであるルーフトップ・コンサート。4人は一体何を考えて演奏していたのだろうか。知らなかったビートルズの姿僕は中期から後期のビートルズが好きなので、初期のビートルズ関してはあまり詳しくない。しかし、今回の映画で当時アメリカで行われていた人種隔離に強く反対する4人*1であったり、アメリカのヒットチャートで1位になり大喜びする姿など、今までに知らなかったビートルズの姿が見える映画であった。僕が思っている「教科書に載っているビートルズと実際のビートルズのギャップ」というのが色濃く見られる映画だ。ビートルズ好きならば必見の映画であろう。もう一度くらい観にいくかもしれない。ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK -The Touring Years DVD スタンダード・エディションposted with カエレバポール・マッカートニー KADOKAWA / 角川書店 2016-12-21 Amazon楽天市場EIGHT DAYS A WEEK -The Touring Years Blu-rayposted with カエレバポール・マッカートニー KADOKAWA / 角川書店 2016-12-21 Amazon楽天市場LIVE AT THE HOLLYWOODposted with カエレバBEATLES APPLE 2016-09-09 Amazon楽天市場*1:結果的にアメリカ南部のスタジアムなどの人種隔離を終わらせる推進力となる
- シネマシティの極上音響上映
- リマスタリングがすごい
- ビートルマニアの熱狂
- ライブアーティストからレコーディングアーティストへ
- 知らなかったビートルズの姿
シネマシティの極上音響上映
シネマシティが有名になったのは、『マッドマックス』の極上爆音上映だろうか。こだわった音響で爆音…というのが「極上爆音上映」であるが、今回は「極上音響上映」ということで、爆音ではなかったらしい。十分に音は大きかったけど。
後ろの入り口から入場したのだけど、最後列からだと若干スクリーンが遠いのかな…?という印象を受けた。
僕はちょうど劇場の中央あたりの席を取っていたのだけど、その辺りだとちょうどよくスクリーンが見える。
そしてやっぱり音響はかなりいい感じ。
『マッドマックス』や『シン・ゴジラ』のように重低音がドンドン来る…というタイプの映画ではなかったが、しっかりとベースの音が聞こえたり、音のメリハリが付いているというか、演奏と話し声がしっかりと分離して聞こえるなど、さすが極上音響。
特によかったのは『Norwegian Wood』の冒頭のギターや『A Day In The Life』の最後の部分のオーケストラの演奏の余韻が残り続ける部分などなど。
もちろんライブ部分も音が良いのだけど、ファンの歓声がすさまじすぎてね…
「いい音響だ!」というのがかなりはっきりとしていた。立川まで足を伸ばした甲斐はあったと思う。少しでもリアルなビートルズを感じられた気がする。
リマスタリングがすごい
映画本編は、とにかくビートルズのツアーの映像、当時の時代背景であったり、関係者のインタビューが連なっていく。
1963年から1966年。ビートルズがライブツアーを行って、ライブバンドとして、若者のシンボルとして、大きな存在となっていく過程が丁寧に描かれている。
スクリーンに映し出される当時のライブ映像は驚くほどきれいにリマスタリングされていて、わりと最近撮られたもののようにすら見える。
もちろん音に関してもリマスタリングが行われており、ライブ盤としてしっかりと聞けるようなクオリティになっていた。
60年代の映像・音声が生まれ変わっているのだ。
これまでに見たことのない映像も大量に出てきていて、ビートルズファンとして大満足の2時間+ライブ映像30分であった。
ビートルマニアの熱狂
ビートルズはベビーブームの若者のシンボルであったが、それゆえに一部のファン(ビートルマニア)の熱気も常軌を逸していた。
ライブのチケットが取れなくて地面に座り込んで泣き叫ぶ。メンバーが乗った車を追い回す。建物のガラスを割って中の様子を覗こうとするなど、もうほとんど暴動レベル。
ベビーブーム世代のたまったエネルギーが暴発しているようなようであった。
当時の映像から見えてくるライブの様子はかなりひどいもので、一挙手一投足に金切り声の歓声、警備員の静止を振り切りステージに向かってダッシュ…
当時の機材の限界もあり、ほとんど演奏が聞こえないような騒音の中、メンバーが自分たちの演奏が聞こえず、後ろでドラムを叩くリンゴは動きで音を合わせていたと証言する。
ライブアーティストからレコーディングアーティストへ
そんな状況にあって、ビートルズに否定的な立場の人も増えていく。
かなり印象的であったのは日本公演である。1966年に行われた日本公演は日本武道館であったが、「武道館でポップミュージックのコンサートが行われるというのは侮辱である」という言説が一部にまかり通り、「BEATLES GO HOME」や「ビートルズを叩き出せ」といった看板が掲げられた。
その当時、ロックは不良の音楽であるといわれていたわけだが、ビートルズはその代表格とされたわけだ。
そんな中でビートルズがライブアーティストからレコーディングアーティストへ変貌する過程が丁寧に描かれていた。
一部の大人の中傷的な主張、ジョンの「ビートルズはキリストより有名になった」という発言への反発運動、イメルダ夫人のワガママ、演奏を聴いていないファン、マスコミの必要以上に攻撃的な質問など、ライブを終わりにしたくなるような出来事が連続して起こっていたことを、当時の映像ははっきりと記録していた。
1966年、ビートルズ最後の公演となったキャンドルスティック・パークでのライブ後に護送車で移動しながら「もうこんなライブは終わりだ」となった4人の気持ちが痛いほどに伝わってきた。
本編終了後に流された1965年のシェイ・スタジアムでのライブ、そして本編の最後に流れたビートルズ正真正銘最後のライブであるルーフトップ・コンサート。4人は一体何を考えて演奏していたのだろうか。
知らなかったビートルズの姿
僕は中期から後期のビートルズが好きなので、初期のビートルズ関してはあまり詳しくない。しかし、今回の映画で当時アメリカで行われていた人種隔離に強く反対する4人*1であったり、アメリカのヒットチャートで1位になり大喜びする姿など、今までに知らなかったビートルズの姿が見える映画であった。
僕が思っている「教科書に載っているビートルズと実際のビートルズのギャップ」というのが色濃く見られる映画だ。
ビートルズ好きならば必見の映画であろう。もう一度くらい観にいくかもしれない。
*1:結果的にアメリカ南部のスタジアムなどの人種隔離を終わらせる推進力となる