ネット上で話題になった話だけど、上野の「国立科学博物館」がクラウドファンディングを開始した。
コロナ禍の入場料収入の減少や光熱費の高騰によって、運営に支障をきたす事態になってしまったため、クラウドファンディングで運営費用を募ることに。
目標金額として掲げていた1億円は即日達成。この記事を書いている段階で5億円を超える支援が集まっている。
理系の端くれとして育ってきた自分も、もちろんこのクラファンに参加した。15000円の「かはくオリジナル図鑑」コースでの支援である。
実はかはくがクラウドファンディングを行うのは初めてではない。以前にもいくつかのクラウドファンディングを立ち上げていたのだけど、その内容は「こういう実験・研究を企画しているから、その資金を集めたいです」という内容である。
それに対して今回は「運営費用が足りなくなりそう」という、博物館の根幹を揺るがすような事態に矢も楯もたまらずクラウドファンディングを実施という状況だ。
今回のクラウドファンディングが大成功を収めそうなのは「まだまだ日本の科学教育も捨てたもんじゃないな」と、何様かという立場から希望を感じさせる話ではあるのだけど、果たしてこれで全てが解決するのだろうか?というと、到底そんな楽観視はできない。
どうしてこの5億円が、文部科学省から捻出されなかったのか。文部科学省がケチったのか、文部科学省への予算配分がおかしいのか、そういう部分を見ていかないといけない話なんだと思う。「科学教育捨てたもんじゃない」と希望を感じると同時に「予算配分間違ってるんじゃないか」という疑いの目を向けなくてはならない。
かはくは「独立行政法人」なのでホームページをよくよく調べると、財務状況をPDFファイルで公開しているんですよね。
この中の「決算報告書」を読んでもらうのが一番いいんだけど、この10年でかはくへの国からの交付金は5億円ほど減少している。公開されている中で一番古いデータは2010年のものだけど、この年の交付金は約30億円、2022年は25億円だ。
年によって多少の増減はあるものの、減少傾向にあるのは明らかだ。
2010年に比べて2022年は83%しか交付金が出ていない。
光熱費が爆上げしてるのに?博物館が集めた標本というのは基本的に減ることはないというのに???ちょっと信じられないと言わざるを得ない。バカなんじゃ?と思う。
問題なのはこの予算配分をした文部科学省がダメなのか、その文部科学省への予算配分を減らしているヤツがダメなのか、とそういう問題である。
光熱費の高騰に苦しむかはくが頼ったのは、国ではなく同じく高い光熱費に苦しめられている一般国民でした。というのは笑えない話だ。
正直なことを言えば、かはくに収容されている標本達が今後とてつもなく大きな経済的利益を生むとは考えにくい。「生産性」という観点から考えれば、予算を減らされるのもわからなくもない。そういうものだとは思う。
ただ、そういうところにお金を使うことができるのが、国としてそれなりに豊かに生活できている、ということなんじゃないか。
ムダなことにお金を使えなければ、その先にあるかもしれないなにかを見つけることもできないんじゃないか。理系の隅っこにいた人間として、博物館にクラウドファンディングをさせてしまうような税金の使い方についてはずっと疑問を呈し続けたいと思う。