Business Journal、小保方晴子擁護の論陣を張る上田眞実氏の記事の信頼度は?

STAP細胞・小保方春子氏を擁護するBusiness Journalと大宅健一郎氏について前に書いた記事内で次のようなことを指摘した。

  • 記事の根拠としている論文はそもそもSTAP細胞に関するものではない
  • 大宅健一郎氏は存在しない(=誰かの筆名?)

blog.tadanemuinda.com

記事にいただいたコメントにもあったのだけど、Business Journalで小保方晴子氏擁護の論陣を張っている人はもうひとりいる。上田眞実氏である。

biz-journal.jp

この記事はTwitterを中心に拡散され、どうやら6000以上ツイートされたらしい。すごいなあ。

d=”この記事についてのツッコミ”>この記事についてのツッコミ

そもそもこの特許申請をした「ブリガムアンドウィメンズホスピタル(Brigham and Women’s Hospital)」というところから調べてみると、まあなんと「Charles Alfred Vacanti」さんが所属する病院じゃないですか。
ピンと来ない方、カタカナで「バカンティ」って書くとピンとくるかも。あの「バカンティ教授」である。

Charles Vacanti | Harvard Catalyst Profiles | Harvard Catalyst

日本のテレビでも報道されていたバカンティ教授。

2014年にネイチャー誌に掲載されたSTAP研究では、特許出願の代表発明人、及び一つの論文の責任著者になっている。バカンティは理化学研究所内で研究をあまりオープンにしないことを要求するとともに、特許出願を急がせた。
チャールズ・バカンティ – Wikipedia

とにかくSTAP細胞的なものへの特許を申請することを求めていた人で、なかなか論文撤回に同意しなかったあのバカンティ教授である。
そしてこの人は小保方晴子氏の博士課程を指導した人物である。

この時点でこの特許申請にかなりアレなにおいがしてくる。
パテントトロールとまでは言わないが、「とりあえず特許」という感じだ。

2012年4月にはネイチャーへの論文投稿と米国仮特許出願を行う。しかし論文はリジェクト
小保方晴子 – Wikipedia

ちなみに小保方晴子氏は2012年にはSTAPの特許を出願している。

笹井芳樹らがメンターの元、3月中に米国仮特許出願とネイチャー再投稿、4月に国際特許出願を行う。2013年10月には国際特許が公開
小保方晴子 – Wikipedia

2013年には笹井氏も出願している。

特許とそれに関するあれこれはこちらの記事が詳しい。
bylines.news.yahoo.co.jp

出願書類上のつじつまが合っていて、新規性・進歩性等の要件が満足されれば、特許として登録されてしまうことはあり得ます。別の言い方をすれば、仮にこの出願が特許登録されたとしても、それはSTAP細胞があったことが立証されたことを意味するわけではありません。

STAP細胞の再現にはハーバード大も含めて誰も成功していませんので結局そのような実験結果が提出されることはなく、拒絶査定となるのではないかと思います。

そう、特許云々はSTAP細胞の存在に関してなにも影響がないことなのである。
控えめに言って、「特許を取られて利権独占!」というのは言い過ぎである。

d=”上田眞実氏とは何者だろう”>上田眞実氏とは何者だろう

上田眞実氏は正体不明の大宅健一郎氏と異なり、Twitterと自分名義のブログを運営している。

twitter.com

jupiter-press.doorblog.jp

またほとんどがBusiness Journalへの投稿なのだけど、たまに他のサイトへの投稿も見られる。その記事のほとんどは原発問題とSTAP問題である。

ただ、目立って出てくるのはやはりSTAP細胞関連。
そしてそのどれもが結論ありきで書かれているようにしか見えないのである。

たとえばこの記事である。
STAP現象、米国研究者Gが発表…小保方晴子氏の研究が正しかったことが証明 | ビジネスジャーナル

キンガ博士は損傷したマウスの骨格筋からSTAP現象を確認し、それを取り出して培養し、多能性を持たせた細胞をiMuSCsと名付けたのだ。発見と作製方法は違っていても、理研が定義したSTAP現象と同じ原理だといえよう。

Characterization of an Injury Induced Population of Muscle-Derived Stem Cell-Like Cells」という論文で「損傷したマウスの骨格筋から多能性を持った細胞が発見された」…という論文である。
試験管内外の話を引っ張ってきて「STAP現象と同じ」そして「小保方晴子氏の研究が正しかった」となるのはちょっといただけない。タイトルとイントロダクションの一行目を読んだだけで違うじゃん。
こんなことやってたらまともな理学部の研究室だったら雷が落ちる。

また、この論文のDiscussionで

The existence of pluripotent-like cells in adult tissues has been a matter of debate for years, since inconsistent results have been reported by various groups9,10,11,12,13,14,15; however, no study thus far has proven that such pluripotent stem cells can arise from differentiated somatic tissues.

「様々なグループ(引用9~15)から矛盾する結果が報告されているため、分化後の組織における多能性細胞様細胞の存在は長年議論になっている。しかし、これまでの研究では多能性細胞様細胞が分化した体細胞組織から生じることが証明されていない」
とある。

これの引用の13番を見ると小保方晴子氏の2011年の論文である。これは小保方晴子氏の博士論文である「The potential of stem cells in adult tissues representative of the three germ layers.(三胚葉由来組織に共通した万能性体性幹細胞の探索)」のことである。

ちなみにこの博士論文はコピペというか剽窃というかが多数発覚。調査委員会では「学位取り消しなし」としたが早稲田大学が学位を取り消している。
ああ、バッサリ。

ちょっと「記事」という体裁で出すには事実誤認と確認不足が多すぎるんじゃないの?と思わざるを得ない。
そもそもまともにSTAP細胞騒動に関する知識があるとは思えないのである。
そしてこれらの事実誤認や確認不足による記事は「STAP細胞」「小保方晴子」への絶大な信頼から来ている思い込みによるものなんじゃないか。

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科学知識って大事だと思うの

自分で言うのもなんだけど、僕は英語がからっきしダメだし、理学部生物科卒ではあるけれどただの学部卒だ。成績優秀だったわけでもない。
その僕が少しだけ調べただけでこれだけアラが見つかるというのはいかがなものなんだろう。いくらサイゾーが運営しているサイトとはいえ、あまりにもひどいんじゃないかなあ…

上に挙げたふたつのような記事は控えめにいってもデマと言わざるを得ない。
とりあえず上田眞実氏には小保方晴子著の「あの日」なんか読んでないで、科学論文の読み方を勉強していただきたい。

氏のブログにあったマック赤坂の写真は保存したくなったけどね。

2 COMMENTS

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中々検証、指摘してるサイトが少ないのでここで
大宅健一郎に続く新たな架空の記者が出てきました、王山覚なんていう
サイゾー発、書いた記事は一つのみ

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アバター fphantom

情報ありがとうございます。
こりゃまたひどいメディアですなあ…サイゾーはなにを考えているのか。なにも考えてないんですかね。
なにかわかったら書いてみようと思います!

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