気管支炎のブルース

1月の終わりごろ、なんだかうっすらと体調が悪いなあ…と思ったら次の日に発熱。時期が時期だけに流行病を心配する状況が発生した。陽性であれば職場やら家族やら知り合いやらに大きな影響が出る。数日前に人に会う用事があったぞ…と頭を抱えてしまった。

なにはともあれ検査をしてもらわなければいけない。
しかし感染症専用ダイヤルへの電話はつながらず。やっとのことでつながったと思ったら「この病院なら検査してもらえるから連絡せよ」と言われ、その病院に電話すると「キャパ不足なんで検査はできません、専用ダイヤルに言われた?全部こちらに誘導されるから迷惑してるんですよねえ。もっと重症になったら電話してください」と非常に温かい対応を受けることとなった。医療が崩壊している。

なんとか検査が受けられる段階になったときには、すでに熱が下がっていた。落語の寿限無じゃないんだから。
検査結果は陰性。なんとも人騒がせである。大山鳴動してねずみ一匹。ただの風邪であったようだ。大変お騒がせしました。


しかし解熱して数日経っても咳が治まらない。流行病ではなかったけれど、それはそれとして質が悪い別の感染症に罹患している可能性を考えるレベルで咳が治まらなかった。
特に夜眠る前なんてひどいもので、咳が出て体が眠るモードにならないし、辛うじてウトウトし出した瞬間に咳が出るものだからたまったものではない。

のど飴でも舐めてやり過ごそう…と思って飴を舐めている途中で咳が止まらなくなり飴が口の中で跳ねた結果、気管にすっぽりと飴が入り、一瞬息を吐くことも吸うこともできなくなったときは真剣に死を覚悟した。
直後に反射で咳が出て一命を取り留めたものの、あと一歩で本当に死ぬところだった。嫌だよのど飴で死にたくないよ。

咳で死んでしまっては忍びないので、病院を受診しなくてはならないのだけど、その手続きもまあめんどうくさい。とりあえず、地元のクリニックに「10日前に発熱、1週間くらい前には解熱したのだけど咳が止まらないんです」と伝えたところ「感染の疑いがあるので、ウチでは診られません。大きな病院に行ってください」と告げられてしまった。
「検査で陰性だったのですが…」「無理です可能性があるので」というやり取りも行われた。検査とはなんだったのか。

それで受診した大きな病院でも、隔離テントのようなところで防護服を着た人に問診を受け、どうやら大丈夫そうだという判定をもらって、やっとの事で建物内に入れてもらうことができた。
もちろんこの対策は必要なのだから行われていることだ。こういう時期に風邪を引く方が悪い。

診察までの待ち時間もなかなか長くかかった。どうしても流行病に目が行きがちだけど、それ以外にも通常業務が発生しているわけで、そりゃあ時間もかかる。医療現場の人には本当に頭が下がる思いだ。
そして、不思議なことにそれまでひっきりなしに出ていた咳が、病院に入った途端ピタッと止まった。咳が出なければ普通に健康体なのである。非常に居づらい。
そういえば10年ほど前に新型インフルエンザが流行った時にも、待合室で高熱に耐えていたら自分よりももっと体調が悪そうな人が次から次へと運び込まれてきて、結局2時間近く順番を飛ばされたことがあったっけ。しかも結果インフルエンザだったし。僕はどうやら病院に行くと健康体に見えるらしい。

レントゲンを撮影し、呼吸の音を聴診器で確認され、診断は「気管支炎」であった。心の中で「ですよねえー」と相槌を打った。
「この咳はどれくらい続くものなのでしょうか」「うーん、一概には言えないけれど、短くて1週間、長くて2ヶ月くらいかなあ」

大きな病院は他の病院からの紹介状がない場合、5,000円の特別料金が加算される。ダメ元で「こういう経緯でこちらに受診せよと言われたのですが…」と話してみたが「電話で言われただけだとダメですねー」ということだ。
甘んじて受け入れよう。合計金額は7,000円だったから、特別料金が70%を占めるけど。クレジットカードで支払いできて本当によかった…


診断を受けたのが2月の頭。最長で2ヶ月続くと言われた咳も、2週間ちょっと経った今ではだいぶ治まってきた。
咳止めが処方されたとはいえ、発作的に咳が出る瞬間があり、その度に周囲の視線が突き刺さるという、なんとも生きにくい期間は何とか乗り切ることができた。

いや、本当にこのご時世で体調を崩すとめんどうくさいことになる。皆様ご自愛ください。

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