2017年最初の映画館での鑑賞をしてきたのだけど、いやーえらいものを見たな。『スノーデン』である。
内容はタイトルそのものズバリ「エドワード・スノーデン」による告発を、オリバー・ストーン監督が映画化したものだ。
ごく普通の29歳
天才プログラマー
「攻殻機動隊」好きのギーク
史上最大の内部告発者
世界中から追われた男
ノーベル平和賞候補
ロシアに亡命中
『スノーデン』
世界を信じた、純粋な裏切り者。 pic.twitter.com/taySsofC4p
— 映画『スノーデン』公式 (@snowden_JP) 2017年1月28日
「エドワード・スノーデン」という名前をニュースなどで聞いたことはある。でも、なにをした人なの…?という人も多いのではないだろうか?
スポンサーリンク
目次
- スノーデン事件の概要(そして映画のあらすじ)PRISMの暴露2013年、イギリスのガーディアン紙にアメリカ政府の通信監視プログラム「PRISM」に関する記事が掲載された。PRISMはNSA(米国国家安全保障局)が運用しているプロジェクトで、アメリカを含む全世界のインターネット通信の傍受されていた。NSAはMicrosoft、Google、Facebook、Appleといった大手IT企業のサーバーに無断でアクセスし、公開情報から非公開情報まで、様々な手段での通信のデータを収集していた。インターネットを使って行われるやりとりを、大規模に監視していたのだ。さらに日本やドイツ、フランスなどの多くの国の重要ポスト(日本では総理大臣やエネルギー関連の大企業など)の電話を盗聴していた事なども明らかにされた。告発者、エドワード・スノーデンこの記事の基となる告発を行ったのが、当時29歳の元NSA職員のエドワード・スノーデンである。スノーデンによる内部告発は「史上最大の内部告発」として世界中で大きな問題となった。そしてこの告発により、彼は母国アメリカから追われる身となってしまう。映画『スノーデン』はエドワード・スノーデンがなぜ史上最大の内部告発をするに至った道筋を描いたポリティカルスリラー映画である。物語はスノーデンがガーディアン紙のインタビューを受けている様子、そして告発に至るまでの回想シーンによって進んでいく。スノーデンの来歴スノーデンは米軍に自ら志願し特殊部隊での訓練を受けるなど、意欲的な軍人であったが訓練中の怪我により除隊を余儀なくされる。その後CIAやNSAに雇用され、コンピューターセキュリティーに関する任務に就くことになるのだが、その中でCIA・NSAの行為に徐々に疑問を抱き始める。NSAの職員が当たり前のようにインターネット上の非公開情報を調べあげ、犯罪歴もその疑いもかけられていない人物の弱点を探る姿に衝撃を受けたり、その情報を基に相手を罠にかけて有益な情報を提供させる。そんな行為にスノーデンは反発を覚えていく。反発を感じながらもそのたびに周囲から立場を脅され、諭されて任務を実行していくスノーデンだが、CIAやNSA、そしてアメリカ合衆国に対しても疑問を持つことになる。そのストレスは体に変調をきたし、恋人との関係にも悪影響が及んでいく。愛国心と国への疑念の間で葛藤するスノーデンだったが、ある言葉を聞いたことが告発を決心させる…感想…えらいものを見たな偏りを受け入れて、考えてみるこの映画はかなりエドワード・スノーデンの側に立った映画だ。まあ、監督もオリバー・ストーンだし、かなり政府へ批判的に傾いている作品であることは忘れてはいけないだろう。しかし、それでも、今一度エドワード・スノーデンの告発について考えてみる必要があるのではないかと強く感じた。アメリカの状況は?スノーデンの告発以降、オバマ政権はNSAの権限を縮小した*1。しかし政権末期にはまた少し権限を拡大した*2。(少なくとも表向きは)情報公開を是としていた政権でこれなのだから、これからの4年間で一体なにが起こるのか。考えたくもない。本当に「テロとの戦い」だけか?大規模な情報収集がどれだけのテロを抑止したのか、実際のところはわからない。しかしアメリカ政府はNSAの情報収集が実際にテロを阻止したと言う成功例を一件も提示できていない*3。そして監視というのは意見を述べる機会を抑制する。それは多様性を損ねることに間接的であったとしてもつながっている。ここ最近のアメリカで多様性への挑戦とも言えるような出来事が立て続けに起こっているが、その抑圧のためにPRISMが使われないと誰が断言できるのだろう。監視可能な社会に生きていることもしかしたら、あなたがさっき誰かに送ったメッセージも、スマートフォンに入っている画像も、誰かに盗み見されているのかもしれない。「自分はテロリストじゃないから」なんて思っても、先に述べたとおり「テロとの戦い」以外のことに監視が使われないと断言できるのだろうか。えらいものを見せられたな。と思う映画であった。そういえば、主演の「ジョゼフ・ゴードン・レヴィット」をどこかで見たことあるなと思っていたら、『インセプション』に出演していたのだった。怪演。スノーデンファイル 地球上で最も追われている男の真実posted with ヨメレバルーク・ハーディング Luke Harding 日経BP社 2014-05-16 AmazonKindle楽天ブックス 映画を観る前に読んでおくといいかもしれない記事NSAはGoogleとYahooのネットワークに侵入していた(ワシントンポスト報道) | TechCrunch Japan米国家安全保障局、Google、Apple、Microsoft、Facebook等のサーバーから直接データを収集(ワシントンポスト報道) | TechCrunch Japan*1:オバマ米大統領、NSA監視プログラムの改革案を発表 – CNET Japan*2:オバマ政権がNSAの権限を拡大、滑り込みで承認 – CNET Japan*3:スノーデン事件にみる「特定秘密保護法案」の本当に危険な理由 | Tatsumaru Times
- スノーデン事件の概要(そして映画のあらすじ)
- PRISMの暴露
- 告発者、エドワード・スノーデン
- スノーデンの来歴
- 感想…えらいものを見たな
- 偏りを受け入れて、考えてみる
- アメリカの状況は?
- 本当に「テロとの戦い」だけか?
- 監視可能な社会に生きていること
- 映画を観る前に読んでおくといいかもしれない記事
スノーデン事件の概要(そして映画のあらすじ)
PRISMの暴露
2013年、イギリスのガーディアン紙にアメリカ政府の通信監視プログラム「PRISM」に関する記事が掲載された。
PRISMはNSA(米国国家安全保障局)が運用しているプロジェクトで、アメリカを含む全世界のインターネット通信の傍受されていた。NSAはMicrosoft、Google、Facebook、Appleといった大手IT企業のサーバーに無断でアクセスし、公開情報から非公開情報まで、様々な手段での通信のデータを収集していた。インターネットを使って行われるやりとりを、大規模に監視していたのだ。
さらに日本やドイツ、フランスなどの多くの国の重要ポスト(日本では総理大臣やエネルギー関連の大企業など)の電話を盗聴していた事なども明らかにされた。
告発者、エドワード・スノーデン
この記事の基となる告発を行ったのが、当時29歳の元NSA職員のエドワード・スノーデンである。スノーデンによる内部告発は「史上最大の内部告発」として世界中で大きな問題となった。そしてこの告発により、彼は母国アメリカから追われる身となってしまう。
映画『スノーデン』はエドワード・スノーデンがなぜ史上最大の内部告発をするに至った道筋を描いたポリティカルスリラー映画である。
物語はスノーデンがガーディアン紙のインタビューを受けている様子、そして告発に至るまでの回想シーンによって進んでいく。
スノーデンの来歴
スノーデンは米軍に自ら志願し特殊部隊での訓練を受けるなど、意欲的な軍人であったが訓練中の怪我により除隊を余儀なくされる。
その後CIAやNSAに雇用され、コンピューターセキュリティーに関する任務に就くことになるのだが、その中でCIA・NSAの行為に徐々に疑問を抱き始める。
NSAの職員が当たり前のようにインターネット上の非公開情報を調べあげ、犯罪歴もその疑いもかけられていない人物の弱点を探る姿に衝撃を受けたり、その情報を基に相手を罠にかけて有益な情報を提供させる。そんな行為にスノーデンは反発を覚えていく。
反発を感じながらもそのたびに周囲から立場を脅され、諭されて任務を実行していくスノーデンだが、CIAやNSA、そしてアメリカ合衆国に対しても疑問を持つことになる。
そのストレスは体に変調をきたし、恋人との関係にも悪影響が及んでいく。
愛国心と国への疑念の間で葛藤するスノーデンだったが、ある言葉を聞いたことが告発を決心させる…
感想…えらいものを見たな
偏りを受け入れて、考えてみる
この映画はかなりエドワード・スノーデンの側に立った映画だ。まあ、監督もオリバー・ストーンだし、かなり政府へ批判的に傾いている作品であることは忘れてはいけないだろう。
しかし、それでも、今一度エドワード・スノーデンの告発について考えてみる必要があるのではないかと強く感じた。
アメリカの状況は?
スノーデンの告発以降、オバマ政権はNSAの権限を縮小した*1。しかし政権末期にはまた少し権限を拡大した*2。
(少なくとも表向きは)情報公開を是としていた政権でこれなのだから、これからの4年間で一体なにが起こるのか。考えたくもない。
本当に「テロとの戦い」だけか?
大規模な情報収集がどれだけのテロを抑止したのか、実際のところはわからない。しかしアメリカ政府はNSAの情報収集が実際にテロを阻止したと言う成功例を一件も提示できていない*3。
そして監視というのは意見を述べる機会を抑制する。それは多様性を損ねることに間接的であったとしてもつながっている。
ここ最近のアメリカで多様性への挑戦とも言えるような出来事が立て続けに起こっているが、その抑圧のためにPRISMが使われないと誰が断言できるのだろう。
監視可能な社会に生きていること
もしかしたら、あなたがさっき誰かに送ったメッセージも、スマートフォンに入っている画像も、誰かに盗み見されているのかもしれない。
「自分はテロリストじゃないから」なんて思っても、先に述べたとおり「テロとの戦い」以外のことに監視が使われないと断言できるのだろうか。
えらいものを見せられたな。と思う映画であった。
そういえば、主演の「ジョゼフ・ゴードン・レヴィット」をどこかで見たことあるなと思っていたら、『インセプション』に出演していたのだった。怪演。
スノーデンファイル 地球上で最も追われている男の真実
posted with ヨメレバ
ルーク・ハーディング Luke Harding 日経BP社 2014-05-16
スノーデン事件の概要(そして映画のあらすじ)
PRISMの暴露
2013年、イギリスのガーディアン紙にアメリカ政府の通信監視プログラム「PRISM」に関する記事が掲載された。
PRISMはNSA(米国国家安全保障局)が運用しているプロジェクトで、アメリカを含む全世界のインターネット通信の傍受されていた。NSAはMicrosoft、Google、Facebook、Appleといった大手IT企業のサーバーに無断でアクセスし、公開情報から非公開情報まで、様々な手段での通信のデータを収集していた。インターネットを使って行われるやりとりを、大規模に監視していたのだ。
さらに日本やドイツ、フランスなどの多くの国の重要ポスト(日本では総理大臣やエネルギー関連の大企業など)の電話を盗聴していた事なども明らかにされた。
告発者、エドワード・スノーデン
この記事の基となる告発を行ったのが、当時29歳の元NSA職員のエドワード・スノーデンである。スノーデンによる内部告発は「史上最大の内部告発」として世界中で大きな問題となった。そしてこの告発により、彼は母国アメリカから追われる身となってしまう。
映画『スノーデン』はエドワード・スノーデンがなぜ史上最大の内部告発をするに至った道筋を描いたポリティカルスリラー映画である。
物語はスノーデンがガーディアン紙のインタビューを受けている様子、そして告発に至るまでの回想シーンによって進んでいく。
スノーデンの来歴
スノーデンは米軍に自ら志願し特殊部隊での訓練を受けるなど、意欲的な軍人であったが訓練中の怪我により除隊を余儀なくされる。
その後CIAやNSAに雇用され、コンピューターセキュリティーに関する任務に就くことになるのだが、その中でCIA・NSAの行為に徐々に疑問を抱き始める。
NSAの職員が当たり前のようにインターネット上の非公開情報を調べあげ、犯罪歴もその疑いもかけられていない人物の弱点を探る姿に衝撃を受けたり、その情報を基に相手を罠にかけて有益な情報を提供させる。そんな行為にスノーデンは反発を覚えていく。
反発を感じながらもそのたびに周囲から立場を脅され、諭されて任務を実行していくスノーデンだが、CIAやNSA、そしてアメリカ合衆国に対しても疑問を持つことになる。
そのストレスは体に変調をきたし、恋人との関係にも悪影響が及んでいく。
愛国心と国への疑念の間で葛藤するスノーデンだったが、ある言葉を聞いたことが告発を決心させる…
感想…えらいものを見たな
偏りを受け入れて、考えてみる
この映画はかなりエドワード・スノーデンの側に立った映画だ。まあ、監督もオリバー・ストーンだし、かなり政府へ批判的に傾いている作品であることは忘れてはいけないだろう。
しかし、それでも、今一度エドワード・スノーデンの告発について考えてみる必要があるのではないかと強く感じた。
アメリカの状況は?
スノーデンの告発以降、オバマ政権はNSAの権限を縮小した*1。しかし政権末期にはまた少し権限を拡大した*2。
(少なくとも表向きは)情報公開を是としていた政権でこれなのだから、これからの4年間で一体なにが起こるのか。考えたくもない。
本当に「テロとの戦い」だけか?
大規模な情報収集がどれだけのテロを抑止したのか、実際のところはわからない。しかしアメリカ政府はNSAの情報収集が実際にテロを阻止したと言う成功例を一件も提示できていない*3。
そして監視というのは意見を述べる機会を抑制する。それは多様性を損ねることに間接的であったとしてもつながっている。
ここ最近のアメリカで多様性への挑戦とも言えるような出来事が立て続けに起こっているが、その抑圧のためにPRISMが使われないと誰が断言できるのだろう。
監視可能な社会に生きていること
もしかしたら、あなたがさっき誰かに送ったメッセージも、スマートフォンに入っている画像も、誰かに盗み見されているのかもしれない。
「自分はテロリストじゃないから」なんて思っても、先に述べたとおり「テロとの戦い」以外のことに監視が使われないと断言できるのだろうか。
えらいものを見せられたな。と思う映画であった。
そういえば、主演の「ジョゼフ・ゴードン・レヴィット」をどこかで見たことあるなと思っていたら、『インセプション』に出演していたのだった。怪演。