クリストファー・ノーラン監督の2010年の作品、インセプションを観た。
あらすじ
主人公のコブは、人の夢の中(深層心理)に入り込むことでアイディアを盗み取る企業スパイ。
そんなコブへ大企業のトップ・斉藤が仕事を依頼してくる。
それはアイディアを盗み取るのとは逆の、アイディアを植え付ける「インセプション」であった。
インセプションは非常に困難であるが、成功すればコブの犯罪歴を抹消すると斉藤が持ちかけてくる。妻の殺害容疑で子どもに会えないコブはインセプションを引き受ける。
インセプションのために夢の中の夢、さらにその夢へと深く潜り込んでいく!
総合評価
★★★★★
※ネタバレあります
d=”夢現実”>夢?現実?
CGも凝っているし、キャストもレオナルド・ディカプリオ、渡辺謙と豪華!そして大事なシナリオもいい!
…そんな映画なのだけど、観ていると混乱してくる。
その原因は、夢の中に入る、夢の中でさらに夢の中へ…というシナリオ。
これは夢か現実か、夢だとしたら何層目の夢?
さらに効果的に回想シーンも入ってくるので混乱すること間違いなし。だけどその混乱が心地よい。
混乱する映画が嫌いな人も安心してほしい。2回くらい観ればちゃんと理解できるから!
d=”夢と現実を認識するには”>夢と現実を認識するには…
ここからはインセプションを一度以上観た人向けの文である。
ネタバレ多し!
インセプションを観る上で重要なのは、今繰り広げられているシーンが夢なのか現実なのかを認識すること。
それを確認するのに最も確実なのは、コブのトーテムであるコマが回り続けるか否かが手っ取り早い。
しかし、コマを回すシーンは非常に限られている。加えて激しく現実と夢を行ったり来たりするので、判断基準をコマだけにすると、途中で現在地がわからなくなってしまう。
そこで目を付けたのは、コブの左手薬指の指輪である。
コブの指輪から考える夢か現実か
まず冒頭のシーン、コブは指輪をしている。そして一段夢から覚めた段階でも指輪をしているが、新幹線で目覚めたコブは指輪をしていない!
その後夢の中に入るシーンがなく、子どもからの電話のあとにコマを回すが、少し回った後に倒れてしまう。
このことから「指輪がない→現実」「指輪がある→夢の中」と考えて行くことにする。
コマを回したあと、斉藤にインセプションの依頼をされ、マイルス教授に会いに行くまで指輪は登場しない。
設計士としてアリアドネをスカウトし、アリアドネに夢の中の説明をしているシーンでは指輪をしている。
するとあたりが崩れてこれが夢の中であることが確定する。
その後、偽装師のイームスや調合師のユスフに出会うシーンでも指輪はしていない。
イームスの薬を試して夢の中に入るとまた指輪が登場するも、夢から覚めたあとには指輪がなくなっている。
ロバートの夢の中に潜入するために乗った飛行機内でも指輪はない。
このことから、インセプションを依頼され、仲間を集めるところまではどうやら現実のようだ。
夢の中へ落ちていく
その後もコブは基本的に指輪をしている。
しかしまあ、なかなか左手が画面に映らないのだよね。映るのは右手ばっかり!
もしかしたら、指輪のヒントを気がつかれないようにそういう撮り方をしたのだろうか…
結局、ユスフの夢の中の第一階層から、モルがいるコブの夢である第四階層まで、コブは指輪をしている。
第三階層では手袋をしているから指輪の有無が確認できなかったのだけど、第三階層を現実だとすると映画全体の話が通らなくなるので夢の中だと断定できる。
そして飛行機へとシーンは戻り、コブは子ども達と再会する。指輪を基準に考えると、現実世界で子どもと再会しているはずである。
しかし、コマを回して子ども達に歩み寄るも、コマが回り終わる前に画面はエンドロールへと進んでしまう。
混乱を楽しむ
最後のカットでコマが止まる前にエンドロールへと切り替わるという演出はかなり驚いた。
またコマが結構長く回って、ちょっとバランスを崩したところで切り替わるという、「どっちだったの!」と叫びたくなるようなエンドロール。
エンドロールでも呆然としていると、エンドロールにも映画を観た人にも仕掛けが施されている。
もしかしたらコブの現実だと思っていた場所も、そもそも夢の中だったのでは?指輪をしていなかったコブも、実は夢の中の住人だったのでは?
もう、誰かがキックしてくれないと現実に戻れないんじゃないか?