数年前に「深夜の渋谷の写真を撮ろう」と思い立ち、終電後の渋谷をひとりで数時間散策したことがあった。
深夜の人気が少ない渋谷はイメージよりも遥かにこぢんまりとしていて、イメージされるより狭い空間に無数の建物が立ち並んでいる。そんな街だった。
そんな中でも道玄坂の周辺は、いさささか湿度が高く、どことなしに汗ばんだ空気を無料で垂れ流しにされていた。
職場の人とポルノグラフィティについて話す機会があった。
音楽の話をすると最終的に「じゃあ一番好きな曲って結局のところなんなのよ」という話題に行き着くと思うのだけど、名曲がたくさんあるポルノグラフィティである。迷いに迷って選出したのは「まほろば○△」という曲であった。
この曲の知名度ってどんなものだろうか。YouTubeで検索をかけてみると、無断転載の動画を合わせても10本くらいしかヒットしない。
「PORNO GRAFFITTI BEST BLUE’S」というベストアルバムに収録されているものの新曲という微妙なポジション、他の収録曲が「アポロ」「アゲハ蝶」「メリッサ」という超有名曲であるために絶妙に埋もれてしまう、そんな難しい立場の曲なのだ。
そもそも読み方も言われなきゃわからない。「まほろば まるやま」と読む。
この「まるやま」は東京都渋谷区の円山町の事を指している。渋谷の道玄坂付近と説明した方が通りがいいだろう。言ってしまえば渋谷のホテル街の曲である。
歌詞に関しては上記のリンクを参考にしていただくとして、まあ、直接的なワードがあったりなかったり、道玄坂近辺を訪れたことがあるとこの曲の空気に納得感があるんじゃないかと思う。
歌われている行為は全体に不毛であるし、「前を向いて頑張ろう!」という気になる曲ではない。だけどなんでしょうねこの魅力は。
広いベッドの下で君は飛ぶと叫んだ後
のけぞり僕の上で どこまでも淫ら落ちるという
ポルノグラフィティ まほろば○△ 歌詞 – 歌ネット
「下で」「飛ぶ」の次に「上で」「落ちる」という言葉の対比があるかと思えば、
無理に演じたりするから
「君は強い女」だからってふられたりしたでしょう?
ポルノグラフィティ まほろば○△ 歌詞 – 歌ネット
あー、なんだか聞いたことがあるぞそういう話、といった色恋に関する様々な歌詞が盛りだくさん。
ホテル街の話ということもあって、それはすべて不毛なのだ。この曲に出てくる男女がこの後再び会うとも思えない。とことん不毛である。