ドッペルゲンガーの話

僕は一切のオカルト的な話は信じない。いや、少なくとも信じまいと思っている。
理由が霊とか祟りとか、そういうボンヤリしたものであったりとか、それによってムダな恐怖を煽るのが嫌いなだけである。あまつさえそれで金儲けをしようとするやつがいるというのが嫌なのだ。
だからといって、不思議な現象を頭ごなしに否定しようとは思わない。世の中には不思議な現象が満ちあふれていることも理解している。

それはきっと科学が追いついていなかったり、なんらかの目の錯覚であったり、勘違いであったり…そういう事象なのだと思う。
しかし、それが我が身に起こってみると、なんとも不思議というか、気持ち悪いというか、なんだかそういう気分になるのも確かだ。
僕も一度だけそんな経験がある。大学生の頃の話だ。 

「あの授業、この前休んでしまったのだけど、プリントコピーさせてくれないか?」「え、その授業受けてないんだけど」「えっ、この間受けてたじゃない?」
僕が遭遇した不思議な現象は、ドッペルゲンガーというやつだ。どうやら僕のそっくりさんが現れてしまったらしい。
自分が受けていない授業に、自分が出席していた…ということらしい。
 
そのときは「まあ、他人のそら似だろー 勘違いだよー」なんて言っていたのだけど、そのあと数年してから別の友人から「あの授業にいたよね?」と言われ、その授業を受け持っていた教授にも「あの授業の時…」と言われた。さすがにただの偶然というわけでもなさそうだ。
 
この現象を説明するには2つの方法があるように思う。
その1、友人×2・教授の勘違い。その2、自分の勘違い。その3、ただのそっくりさん。
 
ひとつひとつ検討してみるも、さすがに友人2人と教授が勘違いするということは考えにくそうだ。友人2人だけなら共謀して僕をからかっていた可能性も考えられるけど、教授を巻き込んでそんなことしないだろう。たぶん。
自分の勘違いの線もあまり考えられない。その授業の単位がないどころか、受講履歴もなかった。間違えて出席したとすれば教科書類を持っていなかったはずなので気がつくだろうし、印象にだって残るはず。そもそも同時間の授業を取っていたので出席できているわけがない。
 
そう考えていくと、最終的には「そっくりさんがいた」というのが最もあり得そうな展開なのだけど、そんなにそっくりな人がいるのならもっと多くの目撃談が寄せられていてもおかしくないし、自分で気がついてもいいはずだ。

果たして、その授業に出席していたのは一体誰だったのだろう。
そして僕はその彼と出会った瞬間死んでしまうんだろうか。

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