動物たちの美しき中2時代、ワクサカソウヘイ著「動物たちの青春白書」

中学2年生の頃、あなたはどんな青春を送っていただろう。部活に打ち込んでいた、初めての彼女ができた、親と一緒に外出するのが恥ずかしくなった、なにか不思議な力に目覚めた…中学2年生、14歳というのはそういう時期である。

ちなみに自分は上記のようなイベントは中学時代に一切起こらなかった。帰宅部だったし、モテないし、親と出かけることに違和感もなく、超能力も目覚めなかった。代わりに深夜ラジオを聴き始め、パソコンで録音してUSBメモリに保存して学校で交換したりしていた。これが僕の青春だ。まだ家にインターネット環境が整う前、radikoが生まれる遥か前の出来事だ。

人間の14歳といえば、そういう時期である。その頃の思い出に浸りたい人、絶対に思い出したくない人、両極端に分かれそうな時期。それが青春。

ヒト科ヒト属ヒトの中でも多様な過ごし方がある青春。それが他の動物だったらどうだったんだろう?という疑問に答えたのがワクサカソウヘイ著「図鑑じゃわからない!動物たちの青春白書」である。

一般にイメージされる動物の大人の姿と、もてはやされる赤ちゃん時代、その間に確かに存在する「動物たちの青春時代」にスポットを当てたのが本書である。

大人でもない、かといって子供でもない、そんな動物たちの知られざる姿が満載されている。

動物たちの青春時代は多様性に満ちている

南極という周りが真っ白な世界で、なぜにわざわざ全身真っ茶色になる?コウテイペンギンの中2時代は軽いジャブみたいなもので、2週間で青春時代を終えるゴマフアザラシ、両親の手伝いをしながら育児を学ぶセグロジャッカル、実は早急に群れを作りたいオオカミ…と実に多様な動物たちの青春が紹介されていく。

なんだか楽しそうだな…と思う青春から、こんな青春絶対ゴメンだ、深夜ラジオ聴いてる方が絶対にいい!と思える青春まで、自然というのは厳しいのだ。

大人の動物入門としてオススメ

登場する動物にはワクサカさんの軽やかな紹介文がつき、さらに枠外コラムとして動物行動学者の小林朋道さんの補足がつくという二段構えで楽しむことができる。

たとえばシベリアシマリスが天敵であるヘビの匂いを自分につけ、ヘビからのさらなる攻撃を防ぐ…「擬臭」という習性について、ワクサカさんが「新社会人が着るスーツ」として紹介。そこに小林さんが「シマリスの青年はスーツの威力をわかっているのかね。もちろん自覚は、ない。それが進化です」と補足。生物進化学を少しかじると登場する「進化に目的はない」という前提がしっかりと紹介されているのである。

これを読んだ時に少し感動してしまった。ここ数年「生き物紹介本」というのはちょこちょこ売れるジャンルのようだが、そのほとんどはゴシップ誌的であった。「みなさん!こいつはこんな変な習性があるんですよ!」と煽るようなものが多く、最終的にはタイトルに「ざんねんな」などという言葉を使う始末。まあ、子供向けの本だからキャッチーなタイトル、笑い飛ばす内容でいいのかもしれないけど。まとめサイトじゃないんだからと思う。

それに対して本書は本当にしっかりした作りだ。バランスが取れているというか、キャッチーな部分と生物学的にな解説がしっかりと噛み合っている。

そういうわけで、大人が生物について面白く知りたいと思った時に本書はオススメできる。青春を終えた後に、自分と動物を見比べてみるのも一興かもしれない。

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